エアブラシが詰まる本当の原因は『溶解不足』。粘度と溶解状態の違いを完全解説

トラブルシューティング

皆さんこんにちは、エムです。この記事では…

  • 今エアブラシが詰まっていてすぐ解決したい!
  • 溶剤追加しても解決しない!
  • よく詰まると聞いてエアブラシ難しそう…

そんな状況の方に向けて解説していきます。

「エアブラシって、すぐ詰まってメンテナンスが大変なんでしょう?」

これからエアブラシを始めようか迷っている方から、必ずと言っていいほど聞かれる質問です。
確かに、塗装中にプスン…と塗料が出なくなる現象は、モデラーにとって最大のストレス。これがあるから「缶スプレーや筆塗りでいいや」と諦めてしまう人がなんと多いことか。

ですが、あえて言わせてください。
あなたの腕が悪いわけでも、エアブラシが壊れているわけでもありません。

多くの初心者が陥る「詰まり」の正体。それは、濃度調整の失敗ではなく、塗料の中で起きている化学的な「分離現象」なのです。
この理屈さえ知ってしまえば、エアブラシは決して怖い道具ではありません。

「薄めたのに詰まる」ミステリーの正体

教科書通りに「牛乳くらいの濃さ」に薄めた。うがい洗浄もした。それなのに、なぜか塗料が出てこない。
あるいは、最初は出ていたのに、数分吹いていると徐々に霧が荒くなって詰まってしまう。

こんな時、多くの人はこう考えます。
「まだ濃いのかな? もっと薄め液(溶剤)を足そう」

残念ながら、これが泥沼への第一歩です。
実は、この症状の原因は「粘度(緩さ)」ではありません。「溶解(溶け方)」の問題なのです。

「ジュース」と「味噌汁」の違いを知ろう

ここで、少しイメージしてみてください。

  • ジュース(完全溶解):砂糖や果汁が水に完全に溶け切っている状態。フィルターを通しても何も残りません。
  • 味噌汁(分散、分離):味噌の粒子が汁の中に漂っている状態。一見液体に見えますが、細かいザル(フィルター)を通すと粒子が引っかかります。

エアブラシのノズルは、0.3mmという極小の穴です。
塗料が「ジュース状態」ならスムーズに通りますが、「分離状態」だと、いくらサラサラの液体に見えても、目に見えない粒子がノズルの内側に堆積し、やがて「ダム」のように流れを止めてしまいます。

これが、いわゆる「ダマ」であり、私が呼んでいる「分離現象」です。

なぜ「薄め液」を足すと悪化するのか?

ここからが重要なポイントです。
塗料用シンナー(溶剤)には、メーカーや種類によって「溶解力(溶かすパワー)」にランクがあります。

もし、あなたが使っている溶剤の相性が悪く、溶解力が不十分だった場合、塗料は「ジュース」にならず「味噌汁」になります。
この状態でさらに溶剤を足すとどうなるでしょうか?

味噌汁にお湯を足しても、味噌の粒は消えません。
ただ「薄い味噌汁」になるだけで、粒(ダマ)は残り続けます。

エアブラシの中で起きているのもこれと同じ。
相性の悪い溶剤でいくら希釈しても、顔料の粒子は分解されず、むしろ分離してノズルの奥でヘドロのように溜まってしまいます。
これが「シャバシャバなのに詰まる」現象の真犯人です。

解決策:「溶かす力」を見直そう

では、どうすれば「味噌汁」を「ジュース」に変えられるのでしょうか?
答えはシンプルです。

  • 溶解力の強い溶剤を使う
  • 溶剤と塗料の相性を確認する。

基本的にこの2点で解決します。

1. ツールクリーナーの活用

通常の「うすめ液」ではなく、洗浄用の「ツールクリーナー」や、プロユースの強力な溶剤(通称:真・溶媒液など)を1割ほど、少量混ぜることで頑固な粒子を一気に溶解できる場合があります。
※ただし、強すぎるとプラスチックを侵す、または塗装した時に先に塗っていた下の塗料が溶け出す可能性があるので日常的に使うのでは無く、あくまで「詰まり解消」や「リセット」の手段として使いましょう。

2. メーカー純正の「相性」を守る

初心者のうちは、塗料メーカーと溶剤のメーカーを合わせるのが鉄則です。
「ラッカー系ならどれも同じでしょ?」と思って他社製を混ぜると、微妙な成分の違いで「味噌汁化」することがよくあります。

それでも詰まってしまったら?

「理屈はわかったけど、今まさに詰まって困ってるんだ!」
そんな場合も焦る必要はありません。エアブラシは構造さえ理解していれば、誰でも簡単に復旧できます。

ノズルの先端に溜まった「ヘドロ(溶け残った味噌)」を除去するには正しい手順での分解洗浄が必要ですが、基本的には先端のノズルに詰まります。

ニードルを後ろに抜いてから、ノズルを緩めて取り外し、中を溶剤をつけた歯ブラシで掻き取るイメージです。

ただ歯ブラシ自体もツールクリーナーで溶けたり毛がボロボロと抜けたりする場合がありますので、ツールクリーナーは少量で様子を見るのが良いでしょう。

別ページでは症状別のフローチャートを用意しましたので、トラブルの際はこちらを辞書代わりに使ってください。

まとめ:詰まりは「失敗」ではなく「化学反応」

エアブラシが詰まると「自分には才能がないのかな…」と落ち込んでしまう人がいます。
しかし、ここまで読んだあなたならもうお分かりですね。

詰まりはあなたの技術不足ではなく、単なる「化学反応の結果」です。

溶剤を変える、相性を知る。たったそれだけの知識で、エアブラシは驚くほど快適なツールに変わります。
「難しそう」というイメージだけで、エアブラシがもたらす圧倒的な塗装の美しさを諦めるのはあまりにも勿体ない!

まだエアブラシを持っていない方は、ぜひこの「味噌汁理論」を頭の片隅に置いて、最初の一歩を踏み出してみてください。
筆塗りでは絶対に味わえない感動が、そこには待っています。

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