あなたのエアブラシ、最近ちょっと調子が悪くないですか?
「塗料がプツプツ飛ぶ」「吹き始めに線が太くなる」「圧をどこに合わせていいのかわからない」──。
実はそれ、コンプレッサーの圧力調整が原因かもしれません。

この記事では、初心者でも迷わず「最適な圧力」を設定できるように、
エア圧の仕組み・用途別の数値・吹き始めのコツまでを、実際の現象とともに分かりやすく解説します。
読後には、明日からあなたの塗装が見違えるように安定します。
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◆ なぜ圧力調整がそんなに重要なのか?
エアブラシの吹き出しは、ただの「空気の勢い」ではありません。
圧力(MPa)は塗膜の質・線の細さ・ツヤの出方を決定づける要素。
少し強すぎるだけで、にじみ・粉吹き・塗料のムラが一気に発生します。
数値設定の前に、まずは圧力調整の**「大前提となる基本的な考え方」**を押さえておきましょう。
【大前提】面積と塗料の特性で「高圧・低圧」を使い分ける
エア圧を決める最大の要因は、「塗る面積」と「距離」、そして「塗料の性質」です。
1. 広い面積を塗る場合 = 「高圧」
戦艦モデルの船体やカーモデルのボディなど、広い面を塗る時は、一度に多くの塗料を飛ばす必要があります。
そのため、**「高圧力」**に設定して、しっかりと塗料を噴出させるのがセオリーです。
2. 小さい・細かい部分を塗る場合 = 「低圧」
迷彩塗装やフィギュアの細部など、細かい部分を塗る時は、必然的にハンドピースと対象物の距離が近くなります。
距離が近い状態で圧が高いと、エアの風圧だけで塗料が四方へ流れてしまいます。
パーツに近づくときは、必ず**「低圧」**に絞って吹くことが鉄則です。注意点として低圧で吹いて塗料の出方が不安定、ザラザラになってしまう等の場合は塗料の粘度高いことが多いので溶剤を追加しましょう。
➡戦車プラモデルの迷彩塗装はエアブラシで!初心者でもできる塗り分けテクニック
3. 繊細な塗料(ミラークローム等)の場合 = 「低圧」
特に注意が必要なのが、アルコール系希釈のメタリック塗料(ミラークロームなど)です。
これらは塗料自体の粘度が低く(サラサラしている)、少しの風圧でも非常に流れやすい性質があります。
通常の塗料以上に**「低圧」**に絞り、ふわっと乗せるイメージで吹いた方が、塗料が流れず鏡のような美しい仕上がりになります。
これらを踏まえた上で、具体的な数値(MPa)の設定を見ていきましょう。
【用語の基礎】「最大圧力」と「定格圧力」は別物
多くの人が失敗するのは、「数値の意味」が曖昧なままレギュレーターを回してしまうこと。
- 最大圧力:タンク内部が耐えられる最高値(例:0.4MPa)。
- 定格圧力:連続使用時に安定して出せる圧(例:0.1〜0.2MPa)。
カタログで「最大圧0.4MPa!」と書いてあっても、実際の作業は定格圧0.1〜0.2MPaで使うのが現実です。
ここを誤解すると、圧が強すぎて塗料が弾かれる原因になります。
◆ 吹き始めが太いのは「高圧スパイク」が原因

よくあるトラブルが「吹き始めだけ強く出て、すぐ落ち着く」現象。
これはレギュレーターとタンク内の空気圧の関係で、最初だけ高圧が噴き出すためです。
設定を0.05MPaにしても、実際の瞬間圧は0.1MPaを超えていることも。
【改善プロトコル】吹き始め高圧をゼロにする3ステップ
- エアを出しながら圧を合わせる(静止状態で調整しない)
- 作業前に3秒の“捨て吹き”をして圧を安定させる
- 手元調整器を併用して微調整(模型の細吹き時に特に有効)
これだけで「吹き始めだけ線が太い」「にじむ」といった症状はほぼ解消します。
模型誌やメーカーFAQでも説明されていますが、実際の吹き出し圧と設定値にはタイムラグがあることを意識しましょう。
◆ 用途別:エア圧の目安早見表
| 用途 | 推奨圧力(MPa) | ノズル径 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 極細ライン・シャドウ吹き | 0.05〜0.08 | 0.2〜0.3mm | 繊細なグラデーション。圧が強いと滲みやすい。 |
| 一般的な模型塗装 | 0.1〜0.12 | 0.3mm前後 | 最も扱いやすい標準圧。ツヤ・発色バランスが良い。 |
| 広面塗装・車・艶あり塗装 | 0.15〜0.2 | 0.4〜0.5mm | しっかり吹ける。塗膜が厚くなるため希釈を多めに。 |
この表を基準に、自分の塗装環境や塗料粘度に合わせて微調整していきましょう。
吹き始めに「シュッ」と安定した霧が出る圧力が、あなたの最適値です。
◆ 安定した圧力を作る3つのコツ
1. タンク付きコンプレッサーを使う
タンクがあると脈動が減り、一定圧で長時間吹けます。
脈動=圧力変動=塗面ムラの原因です。
静音性も上がるので、夜間や室内作業にも最適。
2. 水抜き(ドレンフィルター)をこまめに

湿気を含んだエアは、塗面に「水噛み」や「ザラつき」を生みます。
湿度が高い日は、作業前に必ずフィルターの水を抜いてください。
3. 圧力計を“見ながら”調整する

静止状態ではなく、実際にエアを出しながら調整するのがポイント。
止めたまま調整すると、再開時に一瞬だけ高圧が噴き出します。
「回して→吹いて→確認して→再調整」、このリズムが大事です。
◆ よくある質問:圧力を上げたほうがツヤは出る?
一概にはYESではありません。
圧が高すぎると塗料が乾く前に広がりすぎ、むしろ“粉っぽく”なります。
ツヤを出したいなら塗料濃度を1:1.5〜2で希釈し、圧は0.1MPa程度に。
風圧よりも「塗料の粒の揃い方」がツヤを決めます。
➡【永久保存版】エアブラシ希釈の「科学」と「失敗ゼロ」チェックリスト:気温・湿度別 粘度調整マニュアル
◆ まとめ|安定したエア圧が“上達の近道”
圧力調整は「数字合わせ」ではなく、「塗料と空気の呼吸」を合わせること。
0.05〜0.2MPaの範囲を理解し、吹き始めを制御できれば、仕上がりは劇的に変わります。
一度安定したセッティングを掴めば、毎回の塗装が“再現できる快感”に変わります。
もし今お使いのコンプレッサーで安定しない場合は、
タンク付きモデルや静音タイプを検討してみてください。
「最大圧」「定格圧」「吐出量(L/min)」を確認し、自分のノズル径に合うモデルを選ぶのがコツです。
・広面は「高圧」、細部とメッキ塗料は「低圧」
・吹き始めの高圧は“出しながら調整”で防止
・タンク+水抜き+圧力計チェックで安定性UP


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