エッチングパーツの塗装が剥がれる人へ。ミッチャクロンで「最強の食いつき」と「極薄の塗膜」を手に入れる方法

入門編

「マスキングテープを剥がしたら、エッチングパーツの塗装まで持っていかれた……」

この瞬間の絶望感、モデラーなら誰もが一度は経験があるはずです。
プラスチックパーツの限界を超え、艦船模型の手摺りや戦車のグリル、ガンプラの極小ディテールを再現できるエッチングパーツ。しかし、その金属表面は「塗料を弾く」という宿命を持っています。

「メタルプライマーを塗ったのに剥がれた」
「プライマーを筆塗りしたら、せっかくの繊細なモールドが埋まってしまった」

もしあなたがこの壁にぶつかっているなら、それは腕が悪いのではありません。「選んでいるマテリアル」と「吹き方」が、ほんの少し違っていただけです。

今回は、プロの現場や工業界では常識でありながら、模型用としては意外と語られていない「ミッチャクロンマルチ × エアブラシ」という最適解について解説します。

「飾るだけ」ではなく、可動させたり触ったりしてもビクともしない最強の食いつきと、0.1mmのディテールを殺さない極薄の塗膜。この2つを同時に手に入れましょう。

【目次】

  • なぜ、模型用メタルプライマーでは「剥がれる」のか?
  • 最強の助っ人「ミッチャクロンマルチ」とは
  • 【実践】ディテールを殺さない「砂吹き」テクニック
  • それでも剥がれるのが怖い人へ:マスキングの「儀式」
  • 検証:本当に剥がれないのか?
  • まとめ:金属パーツを恐れるな

なぜ、模型用メタルプライマーでは「剥がれる」のか?

まず、敵を知ることから始めましょう。なぜ金属パーツへの塗装は難しいのでしょうか。

プラスチック(スチロール樹脂)は、ラッカー溶剤によって表面がごく僅かに溶け、塗料が「食い込む」ことで定着します。しかし、金属であるエッチングパーツは溶剤で溶けません。つまり、塗料はツルツルの鏡の上にただ乗っているだけの状態です。

「模型用」の限界

各模型メーカーから発売されている「メタルプライマー」は優秀ですが、あくまで「模型用」として、扱いやすさや安全性を優先して調整されています。
そのため、以下のようなシチュエーションでは密着力が不足することがあります。

  • ガンプラ:ポージングでパーツ同士が擦れる、指で触れる
  • 鉄道模型:車両を線路に乗せる際に触る、走行時の振動
  • 複雑な塗り分け:粘着力の強いマスキングテープを貼って剥がす

ここで我々が必要とするのは、「ちょっとやそっとでは剥がれない、工業レベルの密着力」です。

最強の助っ人「ミッチャクロンマルチ」とは

そこで登場するのが、染めQテクノロジーズの『ミッチャクロンマルチ』です。

本来は自動車のバンパーや建築現場のアルミサッシなど、過酷な環境下で塗料を定着させるために使われる工業用プライマーです。「とにかく何にでも強烈にくっつく」ことから、一部の上級モデラーの間では「最終兵器」として愛用されています。

「でも、工業用スプレーなんて吹いたら、模型がドロドロになるのでは?」

その通りです。だからこそ、エアブラシを使うのです。
缶スプレーから中身を取り出し(あるいは小分けボトルタイプを購入し)、エアブラシで吹く。これが、強度と精密さを両立させる唯一の方法です。

【実践】ディテールを殺さない「砂吹き」テクニック

ここからは具体的な作業工程に入ります。エッチングパーツの最大の魅力である「精密さ」を損なわずに、強力な塗膜を作るための手順です。

Step 1:脱脂(洗浄)

基本中の基本ですが、金属パーツには加工時の油分が付着していることがあります。ツールクリーナーや中性洗剤でしっかりと脱脂してください。

Step 2:ミッチャクロンの準備

ミッチャクロンマルチをエアブラシのカップに入れます。希釈は不要です(原液のまま使用します)。
※粘度が高いと感じる場合は、専用薄め液またはラッカー溶剤でごく僅かに緩めても構いませんが、基本は原液でOKです。

Step 3:エアブラシで「砂吹き」する

ここが最大のポイントです。通常の塗装のように「濡れるまで吹く」のはNGです。

  • 距離:通常より遠め(15cm〜20cm程度)
  • 吹き方:フワッ、フワッと霧を乗せるイメージ
  • 回数:薄く1〜2回往復するだけで十分

表面がなんとなく湿ったかな?程度で止めてください。これをモデラー用語で「砂吹き(すなぶき)」と呼びます。
厚塗りすると、エッチングの網目やスジ彫りが埋まってしまいます。ミッチャクロンは非常に強力なので、ミクロン単位の薄い膜でも十分な効果を発揮します。

Step 4:乾燥

常温で20〜30分放置します。
乾燥時間は短くて済むのもミッチャクロンの利点です。完全に乾くと、透明な強力な密着層が形成されます。

それでも剥がれるのが怖い人へ:マスキングの「儀式」

ミッチャクロンで下地を完璧にしても、マスキングテープの強烈な粘着力にはやはり不安が残るものです。
そこで、塗装したエッチングパーツの上にマスキングをする際は、最後のリスク管理として以下の「儀式」を行ってください。

テープの粘着力は「手のひら」で落とす

マスキングテープを使用する前に、自分の手のひらや手の甲に何度かペタペタと貼って剥がし、粘着力を意図的に落としてください。

「服の繊維(ズボンなど)に貼って粘着力を落とす」という方法もありますが、これはNGです。

  • 服で粘着力を落とす場合:
    繊維のホコリや糸くずがテープの裏面に付着してしまいます。これをパーツに貼ると、テープの縁(ふち)にホコリが噛み込み、塗り分けの境界線がガタガタになったり、塗料が染み込んだりする原因になります。
  • 手で粘着力を落とす場合:
    適度な皮脂で粘着力だけをマイルドにでき、大きなホコリの付着も防げます。

このひと手間で、エッチングパーツへの負担を最小限に抑えつつ、シャープな塗り分けラインを実現できます。

検証:本当に剥がれないのか?

実際にこの工程で下地を作ったエッチングパーツに対し、以下のテストを行ってみました。

  1. マスキングテープ・テスト:
    模型用マスキングテープを貼り、上から指で強く擦って密着させた後、勢いよく剥がす。
    結果:剥がれなし。
  2. 爪こすりテスト:
    塗装面を爪でカリカリと引っ掻く。
    結果:塗膜は傷つくが、下地からペロリと剥がれることはない。

この上からサフを吹いたり、本塗装(ラッカー、アクリル、エナメルなど)を行っても、下地がガッチリ食いついているため、安心して作業を進めることができます。

特に、エッチングパーツを多用する艦船模型の「手摺り」や、カーモデルの「エンブレム」など、後から修正が効かないパーツには絶大な安心感をもたらします。

まとめ:金属パーツを恐れるな

エッチングパーツは、模型の精密感を劇的に向上させる魔法のアイテムです。
しかし、「塗装が剥がれる」というリスクが、その導入を躊躇させていた側面もありました。

今回のポイントをおさらいしましょう。

  1. 模型用プライマーで不安なら、工業用「ミッチャクロンマルチ」を使う。
  2. ディテールを埋めないために、必ず「エアブラシ」を使用する。
  3. 厚吹き厳禁。「砂吹き」で薄く乗せ、30分乾燥させる。
  4. マスキングテープは「手のひら」で粘着力を落としてから貼る。

この工程を経れば、あなたのエッチングパーツは「プラスチックと同じくらい」、いやそれ以上に強固な塗装下地を手に入れます。
ガンプラを動かしても、鉄道模型を線路に乗せても、もう塗装剥げに怯える必要はありません。

ぜひ、次の作品で「本物の金属」を使う楽しさを体感してください。道具と知識さえあれば、ハードルは決して高くありません。

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