サーフェイサーの希釈は「1:1.5」だけじゃない!ツルツル下地から鋳造表現まで自在に操るプロの濃度コントロール術

「サーフェイサーの希釈比率は1:1.5が正解」

模型誌やブログでよく目にするこのフレーズ。確かに、それは失敗しないための「安全圏」です。しかし、もしあなたがそこから一歩進んで、「作品に圧倒的なリアリティを持たせたい」と願うなら、その固定観念を一度捨ててみませんか?

サーフェイサーは、単なる「傷埋め」や「下地作り」のための準備運動ではありません。濃度をコントロールすることで、鏡のような平滑面から、戦車の荒々しい鋳造肌までを作り出す「表現の第一手」なのです。

今回は、基本の「ツルツル下地」の作り方はもちろん、あえて濃度を変えてテクスチャを生み出すプロの技法、そしてエアブラシ派があえて「缶スプレー」を使うべき瞬間まで、サフのポテンシャルを120%引き出す方法を徹底解説します。

まずは基本!「滑らかな下地」を作る黄金比率と粘度

まずは、塗装の基本となる「平滑な下地」を作るための希釈です。光沢塗装(グロス仕上げ)の前や、美少女プラモデルの肌塗装の下地などでは、いかにザラつきを抑えるかが勝負になります。

メーカー推奨は「1 : 1.5 〜 2」

GSIクレオスやガイアノーツなどのラッカー系サーフェイサーの場合、塗料1に対して溶剤(うすめ液)を1.5〜2の割合で混ぜるのが基本です。

  • サフ(原液):1
  • 溶剤:1.5 〜 2.0

この比率であれば、エアブラシのノズル径が0.3mmでも詰まることなく、スムーズに吹き付けることができます。

「牛乳のような粘度」を目視で確認する

比率はあくまで目安です。実際には気温や塗料の古さ(揮発具合)によって粘度は変わります。そこで頼りになるのが、かき混ぜた時の「トロみ」です。

調色スティックですくい上げたとき、ポタポタと落ちるのではなく、「スーッ」と糸を引かずに流れ落ちる状態。「牛乳くらいの粘度」まさにあのシャバシャバ感が理想です。

【脱・初心者】あえて濃く吹く!「砂吹き」を応用したテクスチャ表現

ここからが本題です。多くの入門書では「ザラザラになる=失敗(砂吹き)」と書かれています。しかし、プロモデラーはこのザラザラを「意図的なテクスチャ表現」として武器にします。

希釈を「濃いめ(1 : 0.8)」にして距離を離す

通常より溶剤を減らし、塗料1に対して溶剤0.8〜1.0程度にします。この「濃いサフ」を、通常より少し離した距離からエアブラシで吹き付けると、塗料が霧にならず、半乾きの粒となって表面に付着します。

このテクニックが使える3つのシチュエーション

  1. 戦車・ロボットの「鋳造(キャスト)肌」
    金属が鋳型で作られた際の独特の荒れた表面を再現できます。パテで叩くよりも均一で、スケール感の合った梨地が作れます。
  2. ジオラマの「コンクリート・地面」
    グレーのサフを砂吹きするだけで、アスファルトやコンクリート壁の質感が一瞬で完成します。
  3. カーモデルのエンジンヘッド・鉄道模型の屋根
    「結晶塗装」のようなザラッとした高級感ある質感を、特殊な塗料を使わずに再現可能です。

失敗だと思っていた現象も、コントロール下におけば立派な「技法」になります。これこそが、エアブラシ塗装の奥深さです。

※わざと詰まりやすい濃さで吹くため、作業後は念入りな洗浄が必要です。

傷埋めか?滑らかさか?「番手(グリット)」の正しい選び方

サーフェイサーには500、1000、1200、1500といった「番手」があります。これは紙やすりと同じで、数字が小さいほど粒子が粗く、大きいほど細かくなります。

トレードオフの現実を知る

初心者が陥りがちなのが、「とりあえず1000番を吹いておけばいい」という思考停止です。しかし、番手には明確なトレードオフ(等価交換)があります。

  • 500番:傷埋め能力は最強だが、表面はザラつく(本塗装のツヤが出にくい)。
  • 1500番:表面はツルツルになるが、細かい傷も埋まりにくい。

プロの「黄金リレー」

改造や合わせ目消しをガッツリ行ったパーツには、以下の手順がおすすめです。

  1. まず「500番」を吹く:傷を埋め、形状を確認する。
  2. ヤスリがけ:表面のザラつきをスポンジヤスリ等で均す。
  3. 仕上げに「1200番」以上を吹く:塗装のための平滑面を作る。

面倒でも、役割の違うサフを重ねることで、最終的な仕上がりの「解像度」が劇的に上がります。

そこまでコストと手間をかけられないと思う方はまず全てを1000番でこなす事がおすすめです。

エアブラシが全てではない!「缶スプレー」が輝く瞬間

「エアブラシを買ったから、缶スプレーは卒業」と思っていませんか? 実は、ベテランほど缶スプレーを戦略的に併用しています。

缶スプレーのメリットは「圧倒的な吐出圧」

一般的なホビー用コンプレッサー(L5やL7など)よりも、缶スプレーの方が瞬間的なガス圧と塗料の吐出量は遥かに上です。

例えば、1/48スケールの航空機の翼や、PG(パーフェクトグレード)ガンプラの巨大なパーツ。これを0.3mmのエアブラシでチマチマ塗るのは時間がかかり、結果としてムラになりやすいです。

「ハイブリッド」が最適解

  • 広い面積・大まかな下地作り ➡ 缶スプレーで一気に吹く
  • 細かいパーツ・陰影・テクスチャ表現 ➡ エアブラシで繊細に

このように使い分けることで、作業時間を短縮しつつ、クオリティを上げることができます。「楽をする」ことは「手抜き」ではありません。賢い選択です。

よくあるトラブル:湿気による「白化(カブリ)」

サーフェイサー(特に缶スプレーやエアブラシの希釈が薄い場合)を吹いた直後、表面が白く曇ってしまう現象。これは「カブリ」や「白化」と呼ばれ、空気中の水分を塗料が取り込んでしまうことで起きます。

特に梅雨時や雨の日は要注意です。もし白化してしまった場合は、慌てて触らず、完全に乾燥させてからリカバリーしましょう。

まとめ:サフを制して、作品の解像度を上げよう

サーフェイサーの希釈は、単なるルーティンワークではありません。「1:1.5」という基本を知った上で、あえて濃くしたり、番手を変えたり、缶スプレーを併用したりすることで、表現の幅は無限に広がります。

まずは、次回の塗装でジャンクパーツを使って「テクスチャ吹き(濃いサフ)」を試してみてください。「失敗だと思っていた状態」が「最高にリアルな質感」に変わる瞬間、あなたの模型制作レベルは確実に1段階アップするはずです。

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