ガンプラの内部フレームや変形ギミック、鉄道模型の台車やカプラー。避けては通れない「ABS樹脂」の塗装で、パーツがパキッと割れる、または塗装が剥がれて絶望したことはありませんか?
多くのモデラーが「ABSは鬼門」と恐れますが、実は正しい手順さえ踏めば、ラッカー塗装もエナメルでの墨入れも恐れる必要はありません。
今回は私が実践している塗装術を伝授します。
なぜABS樹脂は割れるのか?犯人は「溶剤の浸透力」にあり
まず敵を知ることから始めましょう。ABS樹脂が割れる最大の原因は、塗料そのものではなく、塗料に含まれる「溶剤」です。特にエナメル塗料の溶剤は、プラスチックの分子の隙間にグイグイ入り込む「浸透力」が極めて強いのが特徴です。
樹脂に溶剤が浸透すると、内部から膨張しようとする力が働き、成形時に残った歪み(残留応力)と合わさってクラック(割れ)を引き起こします。素材の特性については、バンダイホビーサイトでも詳しく解説されていますので、基本知識として押さえておくと良いでしょう。
外部サイト:バンダイ ホビーサイト:プラモデルの素材について
対策は非常にシンプル。「溶剤を樹脂に触れさせないバリア」を作ればいいのです。

ステップ1:脱脂洗浄――バリアを張るための「絶対条件」
「プライマーを塗れば大丈夫」と思っていませんか?その前に、ABS表面に残った離型剤や皮脂を完璧に除去しなければ、どんなに高性能なプライマーも剥がれてしまいます。
洗剤洗い、または「樹脂対応」パーツクリーナー
- 中性洗剤での洗浄: ぬるま湯に中性洗剤を溶かし、歯ブラシで優しく洗います。最も安全な方法です。
- パーツクリーナー: 時短派ならホームセンター等で売っているパーツクリーナーが便利ですが、「樹脂・プラスチック・ゴム対応」等と明記されているものを選んでください。
ステップ2:プライマー処理――樹脂と塗料を繋ぐ「最強の楔」
脱脂が完了したら、次は樹脂表面に強固な足がかりを作ります。ABSはそのままでは塗料が剥がれやすいため、特殊なプライマーが必要です。
おすすめプライマー2選
私が絶対的な信頼を置いているのは、以下の2つです。どちらもプロの現場で欠かせない逸品です。
- ガイアノーツ:マルチプライマー
模型専用に設計されており、極薄で均一な膜を作れるのが最大のメリットです。
公式サイト:ガイアノーツ 商品紹介:マルチプライマー - 染めQ:ミッチャクロンマルチ
工業・カスタムペイントの世界でも「これさえあれば剥がれない」と言われるほどの圧倒的密着力を誇ります。
公式サイト:染めQテクノロジィ:ミッチャクロンマルチ
これらをエアブラシで薄く吹き付けます。厚塗りは禁物。「点」で密着させるイメージで、さらっとコートしましょう。
お手軽に始めるならミッチャクロンマルチの缶スプレータイプを30cm程度離れた位置からサッと吹くのが良いです。

ステップ3:ラッカー塗装で「鉄壁のバリア」を構築する
プライマーが乾燥したら、いよいよエアブラシでラッカー塗装を施します。これが、後に使うエナメル溶剤を遮断する「第2のバリア」になります。
なぜラッカー塗装が必要なのか?
一度乾燥したラッカー塗料の膜は非常に強固で、その上からエナメル塗料を塗っても、下のABS樹脂まで溶剤を到達させません。つまり、「ラッカーの膜でABSをパッキングしてしまう」わけです。
この「膜」をムラなく作るには、やはりエアブラシが最適解です。缶スプレーでは溶剤成分が強すぎて、せっかくのプライマー層を侵食してしまうリスクがあるからです。

まとめ:ABS攻略は「急がば回れ」の精神で
ABS樹脂の塗装は、決して難しくありません。以下のフローを忠実に守るだけです。
- 脱脂: 樹脂対応品で油分を完全にオフ。
- プライマー: ガイアかミッチャクロンで密着基盤を作る。
- ラッカーバリア: エアブラシで均一な膜を作り、溶剤を遮断。
この手順さえマスターすれば、割れや剥がれを恐れてディテールアップを断念する必要はもうありません。正しい知識と道具を味方につけて、あなたの作品をより高みへと引き上げていきましょう。


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