ガンプラの内部フレームや変形ギミック、鉄道模型の台車やカプラー。避けては通れない「ABS樹脂」の塗装。
そんなABS樹脂のパーツで
- 「パキッと割れてしまった」
- 「せっかく塗ったのにペリペリ剥がれてきた」
という苦い経験はありませんか?

結局剥がれたし、ABSにプライマーなんて意味ないのでは?
実は、ABS塗装におけるプライマー(下地剤)は、選び方や使い方を一歩間違えると、密着を良くするどころか、逆にパーツを割ってしまう原因(溶剤浸食)になったり、全く効果を発揮しなかったりすることもあります。
この記事では、なぜ「ABSにプライマーは意味ない」と言われてしまうのか、その理由を深掘りしながら「ABSが割れる原因」と「塗装が剥がれる原因」を根本から解決する方法を詳しく解説します。
なぜ「ABSにプライマーは意味ない」と言われるのか?
ABS樹脂の塗装において、もはや「おまじない」のように語られるプライマー。しかし、ネットの海を渡れば「結局剥がれた」「逆にパーツが割れた」という悲鳴にも似た声が散見されます。
なぜプライマーが「意味ない」などと言われてしまうのか。そこにはABSという素材特有の「気難しさ」が関係しています。

密着力を高めるために、プライマーをたっぷり厚塗りしたら割れてしまった。
実は過剰な塗布は、揮発する前に溶剤がパーツのクラック(ひび割れ)へ浸透する時間を稼いでしまい、「パーツが割れる、砕ける」という本末転倒な事態を招きます。この苦い経験が「プライマー=毒」という極端な評価を生んでいるのです。
また、剥がれる場合は脱脂不足が疑われます。 パーツ表面に離型剤や皮脂が残っていれば、どんな高性能なプライマーでも剥がれてしまいます。
結論として、プライマーが「意味ない」のではなく、「正しく使わなければ逆効果になる」のがABS塗装の真実です。
なぜABS樹脂は割れるのか?犯人は「溶剤の浸透力」にあり

まず敵を知ることから始めましょう。ABS樹脂が割れる最大の原因は、塗料そのものではなく、塗料に含まれる「溶剤」です。特にエナメル塗料の溶剤は、プラスチックの分子の隙間にグイグイ入り込む「浸透力」が極めて強いのが特徴です。
樹脂に溶剤が浸透すると、内部から膨張しようとする力が働き、成形時に残った歪み(残留応力)と合わさってクラック(割れ)を引き起こします。
対策は非常にシンプル。「溶剤を樹脂に触れさせないバリア」を作ればいいのです。

剥がれないABS樹脂の塗装方法は?3ステップで解説
ここからはABS樹脂を正しく塗装する方法を3ステップで解説していきます。ぜひ同じアイテムを使って真似してみてください。
ステップ1:洗剤洗い、または「樹脂対応」パーツクリーナーで脱脂

- 中性洗剤での洗浄: ぬるま湯に中性洗剤を溶かし、歯ブラシで優しく洗います。最も安全な方法です。

- パーツクリーナー: 時短派ならパーツクリーナーが便利。キムワイプにシュッと吹いて軽く拭き取るだけで脱脂が出来、塗料の食いつきが劇的に改善します。
注意点は「樹脂・プラスチック・ゴム対応」等と明記されているものを選ぶことと、パーツに直接ブシューっと吹いてしまうのはNGということ。これは割れ対策のためです。
誰もが知る潤滑オイル5-56を作る呉工業のクリーナーです。一度使い始めると便利で、私は常備しています。
ステップ2:プライマー処理 樹脂と塗料を繋ぐ
脱脂が完了したら、次は樹脂表面に強固な足がかりを作ります。ABSはそのままでは塗料が剥がれやすいため、特殊なプライマーが必要です。
おすすめプライマー2選
私が絶対的な信頼を置いているのは、以下の2つです。どちらもABS樹脂だけでなくエッチングパーツ等の金属にも使えて万能です。
- ガイアノーツ:マルチプライマー
エアブラシ塗装筆塗りするのに便利なボトル入り。中身は基本的にミッチャクロンマルチと同じと考えてよいです。
公式サイト:ガイアノーツ 商品紹介:マルチプライマー
- 染めQ:ミッチャクロンマルチ
お手軽に吹ける便利な缶スプレータイプ。薄く吹き付けるためには30cmほど離して吹くのがオススメ。私は使い始めた頃はこれを空きボトルに移してエアブラシで吹いたり筆塗りしたりしていました。
ミッチャクロンマルチのヘビーユーザーとなった私はこちらの大容量缶タイプを常備しています。小さい容器やガスが封入されている缶スプレーとはコスパが段違いです。いっぱい塗るぞ!という方にはオススメ。
公式サイト:染めQテクノロジィ:ミッャクロンマルチ
これらを薄く吹き付けます。厚塗りは禁物。サーッと表面に乗せるイメージで、さらっとコートしましょう。乾燥時間は温度にもよりますが厚塗しなければ15分程度で十分です。

ステップ3:ラッカー塗装で本塗装し「鉄壁のバリア」を構築する
プライマーが乾燥したらラッカー塗装です。これが後に行うスミ入れのエナメル溶剤を遮断する「第2のバリア」になります。
なぜラッカー塗装が必要なのか?
一度乾燥したラッカー塗料の膜は非常に強固で、その上からエナメル塗料を塗っても、下のABS樹脂まで溶剤を到達させません。つまり、「ラッカーの膜でABSを覆ってしまう」わけです。
この「膜」をムラなく作るには、やはりエアブラシが最適解です。缶スプレーでは塗料が出る量のコントロールが難しく、均一な塗膜を作りにくいためです。

まとめ:ABS攻略は「急がば回れ」の精神で
ABS樹脂の塗装は、決して難しくありません。以下のフローを忠実に守るだけです。
- 脱脂: 樹脂対応品で油分を完全にオフ。
- プライマー: マルチプライマーかミッチャクロンマルチで密着基盤を作る。
- ラッカーバリア: エアブラシで均一な膜を作り、溶剤を遮断。
この手順さえマスターすれば、割れや剥がれを恐れてディテールアップを断念する必要はもうありません。正しい知識と道具を味方につけて、あなたの作品をより高みへと引き上げていきましょう。




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